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2012年 01月 21日

[ 2 ]  パルテノン神殿 ー ギリシア文化の特徴について

デルポイのアポロン神殿に gnoti sauton 「汝自身を知れ」と meden agan 「限界をわきまえよ」という人間に対する警告めいた言葉が示されています。前者は、人間は死すべきものである、そのことを自覚しなさい。後者は、神々はアタナトイ(決して滅びない不滅の存在である)だから、死すべき運命にあるタナトイ(死すべきもの)である人間は神々になろうとしてはいけない、という教訓です。

ここで、人間はタナトイ(死すべきもの)であり、神々はアタナトイ(不滅)の存在であるこの区別・秩序を守ることが大切だ、というのがギリシア的な考え方です。

ギリシア文化の特徴について

ギリシア文化の特徴は秩序(ノモス)と均斉(シンメトリア)と調和(ハルモニア)であると言われています。この3っつの意味をパルテノン神殿の建築をしらべて理解しましょう。

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パルテノン神殿ー驚異のアナロギア(比例)

まず堂々としたドーリア式の柱の本数です。正面は8本、側面は17本(8×2+1)によって美しい均斉のとれた形の神殿ができます。この正面の柱の本数とそれの×2+1はギリシアの神殿の柱の数としてどこでも見られる特徴です。基本的に同じですが同じものはどこにも見られないと言われています。

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       次に、パルテノン神殿の形におけるアナロギアを見てみましょう。正面の幅は 30,9m です。側面の長さは 69,5m で、この比例は 4:9です。柱の直径の4に対して柱心と柱心の間隔は9になっています。ここでも4:9の比例があります。神殿正面の破風(上方の三角の部分)の高さが4、底辺の長さは9です。このようにどの部分の比例(アナロギア)をとらえても4:9の繰り返しが見られます。この比例の秩序(ノモス)は見事な美しい均斉(シンメトリア)を造り出し、同時に調和(ハルモニア)の美しさを生み出しています。

この驚異のアナロギアからでてくる調和を愛するギリシア精神の結晶ともいえるパルテノン神殿は、ギリシア神殿建築の最高傑作といえます。

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パルテノン神殿のクルヴァテュール

神殿床面(ステロバテス)の極微曲線(クルヴァテュール)も驚くべき技術の集積です。床面は水平であるというのは常識です。ところがパルテノン神殿の床面は、中央に行くほど少しずつ高くなっていきます。全く平面であると中央が低く見えるという人間の錯覚を修正するために生み出された研磨技術の成果です。敷石の一つの四辺の角の高さは微妙に異なり、それが中央に向かう全体の床面の極微の曲線を造り出して行くことは至難の業としかいえません。

このクルヴァテュールを生み出す非凡な技術や才能と素晴らしい感性は驚きの対象となります。さらに、パルテノン神殿ほど徹底して建築全体が、明瞭単純な4:9のアナロギア(比例)の数的秩序(ノモス)によって構成されているという例はギリシアでも稀なのです。

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パルテノン神殿の美しさは秩序(ノモス)と調和(ハルモニア)そして洗練された均斉(シンメトリア)のうちにあると言えましょう。

古代ギリシア人はポリス(共同体)で生活していました。ポリスの秩序を維持するために法(ノモス)を守ることを重視していまた。また、人間の理想は神々であったのですが、けっして人間の限界を超えるようなことはしませんでした。人間は、すぐれた精神と健全な肉体をもつこと、その両者の調和(ハルモニア)こそ善き人間としてのすがたであると、そのことに憧れていました。神々になろうとする不遜な気持ちをもたず、極端に走らず、調和した均斉のある考え方で生きたのでした。そのような手本は、神殿建築や彫刻をはじめあらゆるところにあったのです。

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by francesco1hen | 2012-01-21 17:01 | Comments(0)


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