2012年 01月 22日
「愛は人間になくてはならないもです」。これを否定する人は一人もいなと思います。しかし、愛が不在で悲しみや苦悩に苛まれる人が多いのも現実のすがたです。愛は身じかなところにいつもあるのですが、今の時代の人は男女の愛しか知らないようなことをいう人もいます。じつは愛にはさまざまな種類の愛があるのです。古い話ですが、古代ギリシア人は愛についてどのような言葉を持っていたのでしょうか。 ギリシア語の愛という言葉 ギリシア神話や哲学の中で愛という言葉はしばしばでてきます。ギリシアの哲学者によってピリアは「二人の間のすべての愛着の感情」と定義され、それを4っに分けています。 ピリア・フュシケー = 血縁の情愛。 ピリア・クセニケー = 主人と客の間の情愛。 ピリア・ヘタイリケー = 友人間の情愛。 ピリア・エロティケー = 恋における愛(求める愛) この4っのうち、ピリア・エロティケーは、プラトンによって「エロース」恋、求める愛として重要な言葉になりました。 ピリア・ヘタイリケーは、アリストテレスによって「ピリア」友情・友愛として,「エロース」より優れていると強調されました。 エロースとピリア 以外のギリシア語の愛という言葉 エウノイア = 善意と献身 アガペー = 無私の愛情 カリス = 親切と感謝 ストルゲ = 親子の愛情 ポトス = 欲情・快楽を求める欲望 マニア = 激しすぎる愛情 これらの愛のさまざまな「かたち」(表れ)が人間の間にあります。このうちある種のものは身を滅ぼすことになりますが、大部分は人間の愛として失ってはならない大切なものです ギリシア神話において、エロースは、生殖・生成・創造の原理としての愛、異性を求める欲求、さらに善いもの、美しいものを求める根源的で衝動的な力・欲求です。 哲学者ソクラテスにおいては、エロースは「善と美を求める魂」です。その優れた弟子プラトンいおいては、エロースは「最高の善であるイデアへの憧れ」です。 師プラトンに勝る弟子であったアリストテレスは、夫婦にあってはエロースだけではなく、共通の目標を持つ夫婦が互いの徳を求め支えあっていくためには「ピリア」が必要である、と言っています。 プラトンは「エロースの哲学者」、アリストテレスは「ピリアの哲学者」ともいわれています。 ギリシア神話やギリシア悲劇における「愛の姿」 アポロン神とダフネ アポロンは美しく清楚な乙女ダフネに恋しました。ダフネは、男嫌いで走りがら逃れます。捕まえられそうになったとき父の河の神ペネイオスに願って、その身を月桂樹に変えてもらい、アポロンが彼女に手をかけたときに、乙女は木に変わっていました。 意のままにならない恋、すれ違いの恋で、ここには愛の偶然性や運命性が語られています。 死者の国の王ハデスとペルセポネ 耕作の神デメーテルの娘ペルセポネは春の野原で花を摘んでいました。突如、大地が割れハデスが彼女を誘拐して連れ去り、王妃にしてしまいました。母親のデメーテルの交渉によって、1年の半分はハデスのもとで、あとの半分は母親の元で暮らすようになりました。 ここでは、悲劇性や運命性が、また、人間や女性の象徴性が語れています。ペルセポネは麦の象徴。麦と生命、生・死・再生の象徴でもあります。 ホメロスの『オデッセイア』のなかで、英雄へクトールと妻アンドロマケーのあいだの子アステュアナクスに注がれる親の愛情(ストルゲ)が美しく書かれている部分があります。 エウリピデスの悲劇『アルケスティス』 ペライの王アドメトスは神託によってあと僅かの命となったことを知り、生き延びようと妻アルケスティスに身代わりになってくれるように頼みました。年老いた両親から断られ途方に暮れていたからです。アルケスティスは快く引き受けました。なぜならば彼女は、エウノイア、アガペー、カリスの愛をもって純愛に生きた女性であったからです。夫アドメトスの利己的な愛に比べ、彼女の愛の美しさが際立つ悲劇です。 ギリシア語のたくさんの愛の言葉は、今日もわたしたちのあいだでいきいきと生きています。 「愛」は、忘れていたり、気付かなかったり、無視していたり、ということがあってはならないものであり、行動ではないでしょうか。
by francesco1hen
| 2012-01-22 18:53
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人間は、いいものに出合ったり、文化や宗教の深い意味を知ったり、よい事に出合ったりすると、それを共有したり、それを人に伝えて喜びあったりしたくなります。「宜有千萬」(よろしく千萬あるべし)、《 シャローム・平安!》を あなたに。 by francesco1hen カテゴリ
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