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家田足穂のエキサイト・ブログ

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2012年 11月 24日

[ 7 ] アキレウスとペンテシレイア

  ギリシア神話と叙事詩から

[ 7 ] アキレウスとペンテシレイア_b0221219_11563372.jpg


[ 7 ] アキレウスとペンテシレイア_b0221219_11574222.jpgアレクサンダー大王も、ホメロスの叙事詩『イーリアス』の愛読者でした。遠征の陣中にあっても、いつも携えていた『イーリアス』を読む習慣があったそうです。

トロイア戦争がおわりに近づいた頃、またギリシア軍の英雄アキレウスが活躍します。彼は、人間ペーレウスと海の女神テティスとの間に生まれた子供でした。人間でもあるためこの子が戦いで死ぬことを知っていたテティスは、女装をさせけっして戦争に行かないようにさせていました。

しかし、トロイア戦争でアキレウスの武将としての、その力は誰にもまして必要とされていました。その出陣が要請されていたので、智将といわれていたオデュッセウスが、アキレウスを誘いだすことになりました。彼は商人に化けてアキレウスを訪ね、たくさんの女の衣装を広げて見せびらかしました。

アキレウスはたいして興味もなかったのですが、着物のかげに立派な短剣があるのを見つけて、たちまちにして戦争へ行く気持ちが高まり、トロイア戦争に参加することになってしまいました。

こうして、オデュッセウスの計略はみごとに成功しました。英雄アキレウスの出陣にはこのようなエピソードがありました。

戦争のおわりの頃、トロイア随一の英雄、王子のヘクトールが勇ましく戦うなかで、アキレウスの親友で彼の武具を借りて出陣したパトロクロスが、ヘクトールに倒されました。友の死を悲しんだアキレウスは、どうしても敵将のヘクトールを打ち取り、友の敵討ちをはたしたいと決意しまいた。

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                   ヘクトールとアンドロマケーの別れ


アキレウスの挑戦を受けてトロイアの王子、勇者へクトールは、死を覚悟してでも出陣しなければなりませんでした。

『イーリアス』全巻のなかで最も美しい第六巻に、死を覚悟して出陣する勇者へクトールと、それを悲しむ妻アンドロマケーの別れの場面がでてきます。そして、幼子アステュアナクスをかわいそうに思う母、わがが子をあやし口づけするヘクトールの姿、わがが子に祈願を込めた祈りのことばを語りかけ、愛しい妻の手に自分の子をおいてやるヘクトールの仕草などは、『イーリアス』のなかで、ひときわ親子の情愛が美しく描かれていて印象的です。

アキレウスは、友パトロクロスの敵を討つためトロイアの勇者へクトールに戦いを挑んできました。
受けて立つヘクトールは、力を尽くしてアキレウスと戦いました。決着はなかなかつきませんでしたが、一瞬の隙をついてアキレウスの剣が、ヘクトールの喉元を深くさして致命傷となり、ヘクトールはついに倒れました。ヘクトールの遺体はギリシア軍に引き取られてしまいました。

戦いがおわり、トロイア側に悲しみの気分が広がるなかで、トロイアのプリアモス王は、ギリシア軍の陣営におもむき、丁重にアキレウスに願いヘクトールの遺体を引き取ってきました。トロイアの人々の悲しみ、最愛の息子へクトールを喪った王妃へカベー、優しくしてくれたヘクトールを失ったヘレネーの悲しみ、盛大な葬儀に涙する女たちの嘆きのうちに、葬送の儀が行われました。



[ 7 ] アキレウスとペンテシレイア_b0221219_22353731.jpg[ 7 ] アキレウスとペンテシレイア_b0221219_22351173.jpg倒されたヘクトール                           


                                                         ヘクトールの葬送



盛大に葬送の儀が行われたその日、ペンテシレイア女王に率いられた強力なアマゾネス女軍団の来援が城下に到着しました。葬儀がおわり、ふたたび両軍の戦闘がくり広げられました。戦いの雌雄を決するアキレウスとペンテシレイアの戦いがおこなわれました。けなげに戦うペンテシレイアもついにアキレウスを倒すことはできず、アキレウスの鋭い剣を胸元に受けて、命を落としました。

アキレウスは、絶命してゆく彼女の顔をじっと見詰めました。彼女が最期を遂げるその刹那、このけなげな美しい女こそ、自分が最も深く愛する女性であったことを知りました。激しい憐れみと愛着と、後悔と自己嫌悪に苛まれて、アキレウスは自分の手がしてしまったことに、ただ茫然とするばかりでした。
しばらくして、彼にできたことは、彼女の遺体を清め、進んでトロイア軍に返して、丁重に葬らせることだけでした。

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ペンテシレイアを倒すアキレウス (黒絵のギリシア陶器)

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アキレウスの剣で絶命するペンテシレイア (赤絵のギリシア陶器)


兄の王子トロイアの勇者ヘクトールが討たれ、援軍のペンテシレイア女王も討ち取られたトロイア側は、どうしてもアキレウスを討ち倒さなければなりませんでした。戦いはふたたびくり返され、王子パリスがアキレウスとの決戦を挑みました。

若いパリスは巧妙に戦いました。それに劣らずアキレウスは勇ましく立ち回りました。しかし、パリスには、彼を助けるアプロディーテが後ろについていました。アキレウスの致命的な弱点を教えられていたパリスは、はげげしい闘争のなか隙を逃さず、アキレウスの踵をねらい矢を放ちました。

踵を射られたアキレウスの紅潮していた顔は、見るみるうちに青ざめていきました。パリスの第二の矢を胸に受けると、そのまま地面に倒れて命が絶えました。英雄アキレウスの死は壮絶なありさまでした。このようすを近くで見守っていた戦友アイースは素早く駈けよって、アキレウスの痛々しい遺体を担いでギリシア軍の陣営に運んでいきました。

母の女神テティスの恐れは、ついに起ってしまいました。アキレウスの運命は、このような結末でおわりました。

[ 7 ] アキレウスとペンテシレイア_b0221219_1741714.jpg


[ 7 ] アキレウスとペンテシレイア_b0221219_177390.jpg

                 陣中で将棋を指す アキレウスとアイアース




                  *       *       *




      次回は ホメロスの叙事詩『オデュッセイアー』の《 オデュッセウスとペーネロペイア 》 です。










by francesco1hen | 2012-11-24 13:15


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