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家田足穂のエキサイト・ブログ

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2014年 10月 22日

キリストのイメージの変遷(4) 十字架のキリスト         

[ パントクラトールと栄光の主キリストの十字架像]

ローマ帝国時代の「パントクラトール」(天地万物の支配者キリスト)は、ゲルマン的ロマネスク時代の「栄光の主キリスト」と同じ神の姿です。これが十字架像になるとどのように表現されるのでしょうか。時代を追って見ていきましょう。



[ 着衣の「栄光の主キリスト」の十字架像 ]



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これはローマ広場にあるマリア・アンティクワ教会堂で見られる「着衣の十字架像」です。十字架のキリストは着衣のすがたです。その着物を見ると、皇帝の衣服をまとっています。パントクラトールの衣服と同じです。裸で十字架に磔けられるのは、犯罪人の処刑方法です。神として裸で磔になるすがたを見るのは忍びないという気持ちから、着衣のキリストの十字架像が描かれました。(8世紀)


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西ドイツの「メッツの典礼書」に描かれた「裸体の十字架のキリスト」像です。この十字架像は、裸体でも威厳に満ちたキリストです。パントクラトールの威厳があります。(9世紀)


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これはケルン大聖堂のゲロ司教時代に作られた「ゲロ・クロイツ」(ゲロの十字架)です。(10世紀)裸体で苦しみが見られるようですが、堂々たる体躯には栄光の主キリストのすがたが感じられます。


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「イメルバルトのキリスト像」です。この像には「イメルバルト、われを造れり」というキリストの言葉か記されています。堂々とした威厳のある十字架のキリスト像です。明らかに「栄光の主キリスト」の十字架像です。(12世紀中ごろ)


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スペインのカタルーニャ派の「着衣の十字架像」です。(12世紀初)十字架のキリストは華麗な衣服を身につけています。ロマネスク的な「栄光の主キリスト」の十字架像であるといえます。


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イタリアのウフィッツ美術館にある「栄光の主キリスト」の十字架像です。裸体の十字架像であってもカット見開いた目やすがたに「栄光のキリスト」を見る思いです。(12世紀末)



[ 裸体の「受難のキリスト」の十字架像 ]


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フランス、リムーザン派の「受難のキリスト像」(12世紀末)。十字架の上で脇腹を刺され刑死するキリストのすがた。十字架の死がはっきりと分る十字架像です。ゴシック時代なると着衣の十字架像よりも裸体の受難のキリスト像が圧倒的で、ルネサンス・バロック時代へとつながっていきます。


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ジウンタ・ピサーノの作品「受難のキリスト像」(13世紀中ごろ)です。これは東方の美術に刺激されて生まれたといわれていますが、以後の「受難のキリスト像」の原型になったと伝えられています。



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グリューネヴァルとの「磔にされたイエスの死」(16世紀初)時代的にはルネサンス時代のようですが、後期ゴシックの画法で描かれています。歴史のなかでもっとも悲惨な十字架像であると言われています。




[ ルネサンス時代の十字架像 ]


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キリストに最も近づいた画家ジョットの「十字架上での死」(14世紀)。「成し遂げられた」の場面。

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ローマ サン・クリメンテ教会のマゾリーノによる「ゴルゴタの丘の十字架」(15世紀中ごろ)ゴルゴタの十字架が高く掲げられ、キリストの受難が賛嘆されています。


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ボッチチェリの「神秘の十字架」(16世紀初)。美しい聖母子像を描いたボッチチェリにしては珍しい雰囲気の絵です。キリストの受難の神秘の深い神学的な意味がかくされているような絵です。




[ バロック時代の十字架像 ]


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エル・グレコの「十字架の上で叫ぶイエス」(16-17世紀)。
三時ごろ、イエスは大声で「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」(わが神、わが神、どうしてわたしを見捨てられるのですか)(マタイ27, 46)


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ルーベンスの劇的なゴルゴタの丘の「キリストの磔刑」(17世紀)。


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ヴェラスケスの全く端正な「受難のキリスト」像です(17世紀)。





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by francesco1hen | 2014-10-22 11:50


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