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2017年 11月 08日

ハイドンの弦楽四重奏《 十字架上におけるキリストの最後の七つの言葉 》

古典派音楽の巨匠ヨーゼフ・ハイドン(1732ー1809)は、「近代器楽の父」と呼ばれ、交響楽を始め多くの器楽曲をのこしています。そして彼は、Die sieben lezten Worte unseres Eelöser am Kreuze op.51 という弦楽四重奏を作曲しています。この作品についてハイドン自身が「これは私の傑作中の傑作である」と自負するほどのきわめて強い愛着をもった作品でした。この作品は、モザイク・クァルテットの優れた演奏で聴くことができますが、ここでは聴いて頂けないのは残念なことです。

ところで、「十字架上におけるキリストの七つの言葉」とはどんなものでしょうか。エル・グレコとバロックの三巨匠、ルーベンス、ヴェラスケス、レンブラントの絵画と聖書の言葉で、「キリストの最後の七つの言葉」を紹介します。


                           *


 ハイドンの《 弦楽四重奏 》

〈序奏〉  マエスト—ソ・エド・アダージョ (荘重な、そして ゆるやかに)ニ長調 で始まります。



                           *


〈第1曲〉 ラールゴ (ゆっくりと遅く) 変ロ長調

  第一の言葉「父よ、彼らをお赦しください。彼らは自分らが何をしているのか、わからないのです」
                                               (ルカ 23・34)

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        エル・グレコ  《イエス 十字架に付けられる》               


「されこうべ」と呼ばれている所に着くと、そこで人びとはイエスを十字架に付けた。俣、犯罪人も、その一人を右に、一人を左に、十字架に付けた。そのとき、イエスは、「父よ、彼らをお赦しください。彼らは自分らが何をしているのかわからないのです」と仰せになった。人々はくじを引いてイエスの衣を分けあった。            (ルカ 23・33−34)                                              

   *



〈第2曲〉 グラーベ・エ・カンタービレ(ゆっくりと遅く) ヘ短調                    

第二の言葉 「あなたによく言っておく。きょう、あなたはわたしとともに楽園にいるであろう」
                                          (ルカ 23・43)

     
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            ルーベンス 《 ゴルゴタの丘の三つの十字架 》


十字架に付けられた犯罪人の一人が、冒涜の言葉をはいて、「おまえはメシアではないか。自分とおれたちを救ってみろ」と言った。すると、もう一人の犯罪人がこれをたしなめて、「おまえは同じ刑罰を受けていながら、まだ神を恐れないのか。われわれは自分のやったことの報いを受けているのだからあたりまえだが、このかたは何も悪いことをなさっていないのだ」と言い、「イエス様、あなたが王権をもって来られるときには、どうかわたしを思い出してください」と言った。イエスは、「あなたによく言っておく。きょう、あなたはわたしとともに楽園にいるであろう」と仰せになった。      (ルカ 23・39−43)


                          *


〈第3曲〉 グラーベ(荘重な) ホ長調

  第三の言葉 「婦人よ、これはあなたの子です」「この方は、あなたのお母さんです」                                          
       
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    エル・グレコ 《 十字架の下に立つ聖母と使徒ヨハネ 》       


イエスは、母とそのそばに立っている愛する弟子とを見て、母に、「婦人よ、これはあなたの子です」と仰せになった。それから弟子には、「この方はあなたの母です」と仰せになった。そのときから、この弟子イエスの母を自分の家に引き取った。                                            (ヨハネ 19・26−27)





〈第4曲〉 ラールゴ(ゆっくりと遅く) ヘ短調                           

 第四の言葉 「 エリ、エリ、レマ、サバクタニ 」                        
       「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになるのですか?」 


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エル・グレコ 《 キリストの磔刑 》              
                         
       

 正午から、闇が全地を覆い、三時まで続いた。三時ごろに、イエスは大声で、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と叫ばれた。それは、「わが神、わが神、どうしてわたしを見捨てられるのですか」という意味である。                                                     (マタイ 27・45−46)





〈第5曲〉アダージョ(ゆるやかに) イ長調                          

 第五の言葉 「のどが渇く」             *文語文の「われ渇く」という訳も有名。


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          レンブラント  《われ渇く》                            


 その後、イエスは、もはやすべてが成し遂げられたことを知り、「のどが渇く」* と言われた。こうして聖書の言葉は成就した。                                        (ヨハネ 19・28)
                   
* 詩編 22,16 口は渇いて素焼きのかけらとなり、舌は上顎にはり付く。





〈第6曲〉 レント(遅い) ト短調                               
                       
第六の言葉 「成し遂げられた」                             

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ヴェラスケス 《十字架上のキリストの死》          
                     


 そこには、酸っぱいぶどう酒のいっぱい入ったった器が置いてあった。兵士たちは、このぶどう酒をたっぷり含ませた海面をヒソプに付けて、イエスの口もとに差し出した。イエスは酸っぱいぶどう酒を受けると、「成し遂げられた」と言って、頭を垂れ、霊をお渡しになった。* (息を引き取られた、の意)
                                       (ヨハネ 19・29−30)

                          *


〈第7曲〉 ラールゴ(ゆったりと) 変ホ長調

  第七の言葉 「父よ、わたくしの霊をみ手に委ねます」


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            ルーベンス  《十字架からのキリストの降下》


 時はすでに正午ごろであったが、太陽は光を失い、全地が暗闇に覆われて、三時まで続いた。聖所の垂れ幕はまん中から二つに裂けた。その時、イエスは声高く叫んで、「父よ、わたくしの霊をみ手に委ねます」と仰せになった。こう言って、息を引き取られた。                                        (ルカ 23・45−46)


                          *



〈地震〉終曲 プレスト エ コン・トゥッタ・ラ・フォルツア(非常に速く、そして全力で) ハ短調

 終曲では、それまでの穏やかな曲想が一変して、テンポはプレストとなり、さまざまな音型が、聖所の垂れ幕が裂け、大地が震えるようすを表現します。 

「地震が起きる」

 そのとき突然、聖所の垂れ幕が、上から下まで真っ二つに裂け、地が震い、岩が裂け、墓が開いた。眠っていた多くの聖なる人々の体は起き上がり、イエスの復活後、墓から出て、聖なる都に入り、多くの人たちに現れた。百人隊長、および、いっしょにイエスを見張りしていた人たちは、地震やいろいろの出来事を見て、非常に恐れ、「まことにこの人は神の子であった」と言った。                                            (マタイ 27・51)



                      *  *  *



                 [ モザイク・クァルッテ ] の演奏者

 エーリッヒ・ヘルバート(第1ヴァイオリン)  アンドレア・ビショップ(第2ヴァイオリン)
 アニタ・ミッテラー  (ヴィオラ)      クリストフ・コワン  (チェロ)



プレミアム  [ 数象徴法 ]

七つの言葉の7は、「神の恵み」を象徴する数です。 3+4は、7です。

3は、「三位一体の神」を表わす象徴数です。神によって創造された世界と人間は、4という象徴数で表わされます。
神から世界や人に与えられるものは、7「恵み」です。



                          
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by francesco1hen | 2017-11-08 18:17


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