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家田足穂のエキサイト・ブログ

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2012年 01月 20日

[1] 文化という言葉について

「文」という漢字の字源(漢字の最初の形)は、衣服の襟のかたちを表わしたものです。「文」という漢字の意味は、初めは形やようすを示す意味から次第にその意味を展開して、精神的なものまでを表わす意味をもつ文字になっていきます。漢和辞典によれば「文」は次のような意味をもっています。

1)もよう、はなやかなかざり 2)形象 3)事物の現れ(天文) 4)条理(区画) 5)文字
6)ことば(文章) 7)ふみ、書物 8)のり(法・則) 9)人間の知恵が生み出した美しさ(文化) 
10)学問・芸術 11)よい、美しさ 12)飾る(美しくする) 13)文身(いれずみ)をする
(風俗)。 以上は、人間の生活の全領域にかんする色々な文化の現象を表わしています。

一方、今日われわれが、文化として使っている英語やフランス語の culture は、それぞれラテン語の
cultus を語源としている言葉です。この言葉は、豊かな意味と文化的内容を持っているという点で、
漢字の「文」という言葉とよく似ています。それぞれの固有の文化を持っていた漢民族とローマ人が
、言語の意味や内容において共通ないし類似した考えを持っていたことは、たいへん興味深いことであるといえます。

文化の語源となったラテン語の cultus もたくさんの意味をもっています。意味の展開にすこし注目したいと思います。羅和辞典によれば、次のような意味があります。

1)耕作 2)耕地 3)世話・養育 4)習慣・生活方法 5)贅沢 6)衣服 7)装飾 
8)教化 9)教養 10)薫陶 11)尊敬 12)祭礼・礼拝 などがあります。

cultus が文化という意味で culture となった経緯について少し考えてみましょう。culture という言葉は、ラテン語の cultura の転化で、本来は colo つちかう(培養),耕す、手がける、というラテン語から出て、土地の耕し( agri cultura)= (agriculture = 農業)、動植物の世話を意味しました。
しかしこの後は、心の培養、つまり精神の修練、修道( anima cultura)の意味で使われるようになりました。また、 cultura は祭礼・礼拝という意味をもつ cultus から出ている言葉で、このように受け継がれて来た中世ラテン語の cultura は、様々な道具にはじまる衣食住などの物質文化、および、学問や教養、修道生活に見られる精神文化を共に包含する、今日の文化のコンセプションとほぼ一致する内容を示しています。

漢字の「文」やラテン語の cultus には今見てきたような様々な意味がありますが、 まとめて言えば、文化とは、人間の生活の仕方である( Culture is the way of life.)ということができます。
思えば人間の文化のすがたには、実にさまざまな豊かさで展開されていることに驚きを感じます。

その一端を写真で具体的に見てみたいと思います。

[1] 文化という言葉について_b0221219_189461.jpg

北鎌倉の東慶寺(駆け込み寺)の本堂の端正な美しさを示す仏教建築の美しい姿。この寺で多くの不幸な女性たちが救われました。この寺は尼寺でしたが、明治以降は男僧の寺となっています。
[1] 文化という言葉について_b0221219_18121192.jpg

東慶寺蔵の「キリシタン聖餅箱」(チボリウム=キリストの体であるパンを入れておく聖体器)
この聖体器があることは、ある高貴なキリシタン女性が逃げ込んで保護されていたのかもしれません。そぞろ想像は深まります。
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[1] 文化という言葉について_b0221219_18181861.jpg

[1] 文化という言葉について_b0221219_18184096.jpg

北海道渡島当別のトラピスト修道院の正門と修道院本館正面
6世紀の聖ベネディクトの会則のモットー「祈りと労働」によって始められた修道院運動は、中世西ヨーロッパの文化の基礎を作りました。そのことが高く評価されて、聖ベネディクトは「ヨーロッパの父」と言われています。その精神 ora et labora (祈りかつ働け)にもとづいて、今日もこの修道院は、修道院文化を維持・発展させています。


 

by francesco1hen | 2012-01-20 18:41


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