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2012年 11月 19日

[ 3 ] アポロンとダプネ

  ギリシア神話と叙事詩から

主神ゼウスの息子、太陽神アポロンは、ギリシアの青年の理想像でした。そして青年のみならず、ほとんどの男性の人気が、このアポロンに集中していました。その若々しさ、美しさ、太陽の神といわれる明朗で伸びやかな誇らしい面影をもつアポロンは、最もギリシア的な神格であるといえます。

太陽神アポロンの神たるゆえんは、予言、音楽、医術、弓術の名手としての力(アレテー・優れていること)にありました。あるときアポロンは、大蛇ピュトンを射殺して得意になっていましました。これよりも強い弓をもつエロースはこれを見逃せずアポロンと喧嘩になりました。言い負かされてしまったエロースは、アプロディーテに相談しました。この結果アポロンへの恨みをはらし、困らせるために計画がたてられました。

エロースが金色の矢をアポロンに打ち込み、河神ペネイオスの娘(ニンフ)ダプネに鉛の矢を射させることが決まりました。青年の理想像で美しいアポロン、男ぎらいで清楚さゆえにいっそう男心を魅惑するダプネは・・・・・。

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「たちまち、アポロンの方は、恋にもだえる身となったが、ダプネのほうは、恋人などという言葉を聞いただけでも逃げ出した。彼女は、奥深い森と野獣の獲物を歓びながら、未婚の処女神アルテミスと競い合っていた。乱れるにまかせた彼女の髪を一本のリボンが留めているだけだった」。

「逃げていながらも、彼女の姿は美しかった。風が、彼女のからだをあらわにしていた。向かい風で着物ははためき、髪はかるい微風にも後ろへなびいた。必死に逃げることで、彼女の美しさは増した」。
                        
                    オヴィディウス『変身物語』より

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このかけっこは無限につづく性質のものでしたが、ダプネはついに追いつかれてしまいました。彼女は、背後に迫ってきたアポロンの熱い息が自分の髪にかかってくるのを感じます。もう駄目だと思ったとき、父親である河神ペネイオスの流れが目にはいり、男に愛される原因となる自分の美しい姿をなくしてください、と願いました。

アポロンが彼女のからだに指をくい込ませたとき、ダプネのからだは美しい月桂樹に変わってしまいました。アポロンの熱い口づけは、その固い月桂樹にしか出来ませんでした。

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この彫刻は、17世紀バロック時代の鬼才芸術家ベルニーニの作品です。神話の一瞬をとらえて、この神話全体のふんいきをみごとに表現しています。彼はギリシア神話やキリスト教の題材からもたくさんの傑作を生みだしています。サン・ピエトロ大聖堂前の円形広場の周りの列柱も彼が設計したものです。









ギリシア神話では、神々のすがたは外見上もその行為においても、人間とかわりない様子です。ゼウスは多情な男性として、しばしば愛欲にひたります。これに嫉妬して正妻のヘラは、夫ゼウスの相手をした女神や女にひどい仕打ちをします。ゼウスもこれを止めることはできません。

男がわの強引な欲望にたいして、可憐な乙女がこれを避けようとする愛のパターンがよく生じます。神々はその力において優れていますが、それ以外にはまったく自由ではないようです。

つまり神々の世界は、人間の世界の縮図であるともいえます。あるいは、それは人間たちの願望や理想の状態を示しているともいえます。また、神々の不幸も、人間の不幸も同じような性質です。

愛についていうと、その愛は神々にも人間にとっても、偶然性のなかでエロースの矢に支配されるという、外からの力のよって支配される傾向があります。ですから、その愛は自発性に欠けるということになりますね〜。


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          マイセンの陶器による《アポロンとダプネ》も人気があるようです。




           *次回のテーマは [ 冥界の王ハデースと娘ペルセポーネ ]です*




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by francesco1hen | 2012-11-19 11:51 | Comments(0)


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