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家田足穂のエキサイト・ブログ

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2012年 12月 12日

「 道 」という字は面白い(2)

「道」について ー その意味の深さと広がり


月日は百代の過客にして、行きかふ人もまた旅人也。船の上に生涯をうかべ、馬の口とらへて老いをむかふるものは、日々旅にして旅をすみかとす。古人も多く旅に死せり。

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有名な松尾芭蕉の『奥の細道』の序文です。芭蕉は、俳諧の真髄を求めて旅に出ました。
さまざまな人生が旅に喩えられています。死に隣り合わせているような奥州への旅で芭蕉はさまざまな体験をしながらいい俳句の数々を遺しました。また、『奥の細道』いう素晴らしい紀行文を後世に残しました。奥州の小道を歩いた彼は、その紀行文で深い味わいのあることがらを書いてくれました。

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小道といえば、旧約聖書の詩編の中にも美しい言葉がでてきます。

  神よ、あなたの道を示し、その小道を教えてください。
  真理のうちに わたしを教え導いてください。
  あなたは わたしの救いの神、 
  いつの日も、わたしは あなたを待ち望む。      (詩編 25 , 4 ~ 5)

あなたの道、その小道は、「神の道」です。それは、また「神への道」で、神への信頼をもって歩む道です。まちがいなく神のところまで行くための道、それは意味の深い小道です。小道の目的地は、天の国です。天の国とは、人と神が完全に「愛において一つになる」状態であると信じられています。


「小道」や「細い道」から連想されるのは、アンドレ・ジッドの『 狭き門 』( La porte etroite )です。ジェロームとアリサの恋の物語ですが、聖書のことばから題名がつけられています。

  狭い門から入りなさい。滅びへの道は広く、そこに通じる道は広々としていて、そこから入る者は多い。しかし、  いのちへの門は狭く、そこに通じる道は細く、それを見つける者はすくない。
                                    (マタイによる福音書 7 , 13~14)

天国へ通じる門は狭く、そこに達する道は細い道であっても、「永遠の命」というかけがえのない「宝」をえるためには、「狭い門」(イエス)こそ大切な門であり、「細い道」(イエスの福音・ことば)が、「永遠の命」につながるこの上ない「道」であるという意味になります。

「永遠の命」がいかに大切なものであるかということを、つぎの言葉がつたえています。

  たとえ全世界を手に入れても、自分の命(永遠の命)を失ったならば、なんの益になろうか。
                                      (マタイによる福音書 16, 26 )



「狭い門」と「細い道」は、茶道の茶室と露地にあります。門から茶室にいたる道のことを「露地」といいます。露地は、俗世間の気持ちをあらための、茶室につうじる道です。「和・敬・清・寂」の無限の理想の世界に入るためには、「露地口」と「中潜り」(ともに門)を通って露地を伝い、ツクバイ(蹲う・謙遜な気持ち)で口をそそぎ、狭い「にじり口」から身をかがめて茶室に入ります。

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「にじり口」について、千宗室は、つぎのように言っています。「利休が、秀吉の命で切腹させられたのは、キリシタンであったためであり、茶室のにじり口も「狭き門より入れ」という聖書のことばを具体化したものです」と。


                              *


茶室の「和」における「賓主互感」と「敬」「清」「寂」のときを心ゆくまで過ごして、茶室を後にするときの気持ちを「余情残心」といいます。茶室は、「至福の時」を過ごす場所であるのです。


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   座間谷戸山公園内にある「巡礼街道」。むかし、多くの人が通ったようです。これも「細い道」です。

by francesco1hen | 2012-12-12 18:29


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