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2018年 07月 20日

詩編 22「メシアの受難の詩」と 《 メサイア 》の楽曲

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            エル・グレコ  「エリ、エリ、レマバクタニ!」


詩編22 は、他人から非道に扱われ、神との断絶を体験する人の嘆きの詩といわれています。したがって、「神のしもベの苦しみと願い」 という題を付けられることもあります。

しかし、その多くの言葉は、イエスの受難の情況を彷彿させるものがあり、また、新約聖書のイエスの受難に引用される個所が多いので有名です。

 それで、この詩編は「メシアの受難の詩」 といわれています。

              

                   *



             詩編22「メシアの受難の詩」



22・2  わたしの神よ、わたしの神よ
      なぜわたしをお見捨てになるのですか。
 
         (この言葉は、マタイ27・46 マルコ15・34で引用される)

      なぜわたしを遠く離れ、救おうともせず
      呻きの声も聞いてくださらないのか。

   3  わたしの神よ
      昼は、呼び求めても答えてくださらない。
      夜も、黙ることをお許しにならない。

   4   だがあなたは、聖所にいまし
      イスラエルの賛美を受ける方。

   5  わたしたちの先祖はあなたに依り頼み
      依り頼んで、救われて来た。 

   6  助けを求めてあなたに叫び、救い出され
      あなたにより頼んで、裏切られたことはない。

   7  わたしは虫けら、とても人とはいえない。
      人間の屑、民の恥。  

  8  わたしを見る人は皆、わたしをあざ笑い   (ルカ23・35-37で)
   唇を突き出し、頭を振る。

      (マタイ27・39-44 マルコ15・29で、《メサイア》 27曲の歌詞。)

   9  「主に頼んで救ってもらがよい。
      主が愛していておられるなら、助けてくださるだろう」

               (マタイ 27・43-44で、《メサイア》28曲の歌詞。)

  10  わたしを母の胎内から取り出し
      その乳房にゆだねてくださったのはあなたです。
  11  母がわたしを身ごもったといから
      わたしはあなたにすがってきました。
      母の胎内にいるときから、あなたはわたしの神。

  12  わたしを遠く離れないでください    
       苦難が近づき、助けてくれる者はいないのです。

  13  雄牛が群がってわたしを囲み
      バシャンの猛牛がわたしに迫る。 
  14  餌食を前にした獅子のようにうなり
      牙をむいてわたしに襲いかかる者がいる。

  15  わたしは水となって注ぎだされ    (無抵抗になすがままにされる)

      骨はことごとくはずされ       (肉体的に激しい苦痛を受ける)

      心は胸の中で蝋のように溶ける。         (魂の苦悩の表現)

  16  口は渇いて素焼きのかけらとなり    (ヨハネ 19・28で「渇く」)

      舌は上顎にはり付く。       (十字架上の苦難を想像させる表現)


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グリューネヴァルト    「イエスの磔刑」         


      あなたはわたしを塵と死の中に打ち捨てられる。

  17  犬どもがわたしを取り囲み
      さいなむ者が群がってわたしを囲み  
      獅子のようにわたしの手足を砕く。  (ヨハネ 19・34「刺し貫き」)


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          ルーベンス  「刺し貫かれるイエス」



     18  骨が数えられる程になってしまったわたしの体を
         彼らはさらしものにして眺め
      19  わたしの着物を分け
         衣を取ろうとしてくじを引く。
     
                  (マタイ 27・35 と ヨハネ 19・23-24 で)

  20  主よ、あなただけは
     わたしから遠く離れないでください。
     わたしの力の神よ
    今すぐにわたしを助けてください。
   21  わたしの魂を剣から救い出し
       わたしの身を犬どもから救い出してください。
22  獅子の口、雄牛の角からわたしを救い
       わたしに答えてください。



                  *

  
   「詩編22」の22節以下は省略。あと、32節までつづきます。


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      アヴィニオンのピエタ
     

                   *



ここに掲げた「詩編22」には、メシアの受難におけるイエスの肉体的・精神的苦痛と苦悩、苦難における例えようもない孤独感に苛まれていることが、余すところなく表わされています。


                   *



       「詩編22」からの歌詞による《 メサイア 》の楽曲


《 メサイア 》第10楽曲群 第27曲と28曲の主題は、ゴルゴタの丘におけるメシア受難の描写です。

十字架上のイエスに浴びせられる群衆の嘲笑と悪意の言葉、メシアへの神を恐れぬ侮辱と暴言が中心になっています。

その声楽的語法は、テノールの〔レチタティーヴォ・アコンパニャート〕と〔合唱〕という形が採られています。



第27曲「彼を見る人は皆、彼を嘲笑い」(メシアに対する群衆の嘲笑と悪意)

   彼を見る人は皆、彼を嘲笑い、唇を突き出し、頭を振る。    
                              (詩編22・8)


第28曲「主に頼んで救ってもらうがよい」(メシアへの侮蔑と暴言)

   「主に頼んで救ってもらうがよい。主が愛しているなら、助けてくれるだろう」
                              (詩編22・9)



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        エル・グレコ  「成り終われり」 イエスの十字架上での死



                    *






by francesco1hen | 2018-07-20 11:03


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